取材監修:女子栄養大学栄養学部教授 上西一弘先生
そもそも食塩は
からだでどんな働きをしているの?
私たちのもっとも身近な調味料ともいえるのが食塩。食塩の化学名はNaCl(塩化ナトリウム)で、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)が結合したものです。このナトリウムは、私たちのからだに不可欠なミネラル(無機物)の一つで、細胞機能の維持、筋肉の収縮・弛緩、神経の伝達などの役割を担っています。もしも体内にナトリウムがなかったら、私たちは生命を維持することができないのです。
とはいえ、通常の生活をしていれば、ナトリウムが不足することはまずありません。問題になるのは、食塩のとりすぎによる健康への悪影響です。
通常、一時的に食塩をとりすぎた場合は、必要量を上回った分はからだの外に排泄されます。しかし、習慣的に食塩をとりすぎていると、ナトリウムが排泄しきれず体内に蓄積し、さまざまな健康リスクを高めるのです。
からだに必要な食塩
でもとりすぎには注意を
食塩のとりすぎといえば、まずイメージするのが高血圧です。日常的に食塩をとりすぎていると血中のナトリウム濃度が濃くなっていきます。からだは血液量を増やすことでナトリウム濃度を薄めようとします。血液量が増えると、血管にかかる圧力が高くなり、高血圧になるのです。
高血圧の状態が長くつづくと、血管が徐々に傷ついて硬くなる「動脈硬化」になります。この動脈硬化が進行すると、血管に血栓ができて血管が詰まったり、血管が破裂することがあります。これが脳の血管でおこると「脳卒中」、心臓の血管でおこると「心筋梗塞」となり、命に関わることもあるのです。
食塩のとりすぎは高血圧以外にも、ナトリウムを排泄する腎臓に負担がかかり腎機能が低下しやすくなったり、胃がんのリスクも高まることが、多くの研究で明らかになっています。
からだに必要な食塩。でもとりすぎには気をつけたいものです。適切な食塩の量を知って、日々の生活を見直すことが病気を予防するための第一歩です。
次のページでは、まず知ってほしい【日本人がどれくらい食塩をとっているか】について説明します!