こんにちは!マルハニチロ担当者イワタンです。
最近よく耳にするICT(Information and Communication Technology)。日本語にすると『情報通信技術』。
簡単に言うと、さまざまな技術を使って、人と情報をより便利につなぐこと。マルハニチログループの魚の養殖場でもICTを活用した技術開発に取り組む社員がいます。
▲左から斎藤課長役(検査機器を海へ差し込み中)、インタビューにお答えいただく中野さん、牧課長役
本日は、最先端のICT技術で養殖のスマート化に取り組む、中央研究所 技術開発課ICTチーム中野さんのインタビューをお届けします。
ICTで何ができるの?
中央研究所 技術開発課ICTチームのお仕事を教えてください。
生産現場の省人化や生産の効率化を目指し、ICT先端技術と現場の課題をマッチングさせた技術開発を行っています。
▲環境モニタリング装置を開発する様子
▲機器を水槽に設置したもの
これまでどんな技術を開発したのでしょうか?
養殖魚をAIでカウントする技術を開発しました。養殖業界ではAIの活用はまだ珍しく、特許を取得したマルハニチロ独自の技術です。
養殖生産現場でAIが欠かせない存在に
AIは魚のカウントにも活躍するんですね!どんな技術を開発したのでしょうか?
稚魚と成魚のAIカウンターを開発しました。当然大きさや動きが全く異なりますので、それぞれ違った苦労がありました。
えっ、稚魚と成魚でAIカウンターって違うんですか?
まず稚魚のAIカウンターについて詳しく教えてください。そもそも従来はどうやって数えていたのでしょうか?
養殖業界では今でも一般的な方法なのですが、従来は稚魚を網でバケツなどに移し重さをはかり、1尾あたりの重さで割り、尾数を計算していました。魚にも人にも負担がかかる作業で、計測の精度もあまり高くはありませんでした。
そこでAIの出番です。特殊な形状の配管に稚魚を通してカメラで撮影。画像をAIが分析し、正確な稚魚の数をカウントします。
▲稚魚AIカウンターシステムのイメージ図
特殊な形状とはどんな形ですか?
画像撮影する箇所のみ少し平らな形状をしています。これは食品工場や飲料工場で配管中の液体を目視確認する仕組みからヒントを得ました。魚の養殖だけではなく、食品の製造も行うマルハニチロならではの技術と言えます。
▲食品工場で配管中の液体を目視検品する様子のイメージ図
実際のカウントの様子を見るとものすごいスピードですね!
▲黒い影が稚魚。白い点がこれから計測される稚魚としてAIが認識した個体。青い点が計測済みの個体
※動画再生時には音声が流れますので、音量にご注意ください。
▲稚魚AIカウンター稼働テスト中の様子
※動画再生時には音声が流れますので、音量にご注意ください。
人が行うより半分以下の時間でカウントできます。うまくカウントできる流速の調整や、AIの仕組みづくりにも苦労しましたが、先行して開発していた成魚AIカウンター「かうんとと」の技術を活用し、うまくいきました。
▲海上の生け簀(いけす)に移した稚魚
逆転の発想で大成功!成魚AIカウンター「かうんとと」とは?
成魚AIカウンター「かうんとと」※についても教えてください。
※「かうんとと」は数字を数える「カウント」とさかなを意味する「とと」を組み合わせたネーミング
稚魚と違い、成魚であれば人の目で計測することもできますが、1日に数千~数万尾をカウントしなければなりません。しかも活きの良い成魚は激しく動きますし、大きさ・形・向きはバラバラの状態で目視、手動で計測する作業はとても大変なのでAIの出番というわけです。
成魚は大きいのでAIも簡単にカウントできそうですね!
それが結構苦労したんです。魚の形をAIがうまく認識してくれず…。試行錯誤の末、尾の部分をのぞいた魚の形、ラグビーボールのような形をAIに学習させたところ大成功!この点も取得した特許のコア要素となっています。
▲成魚AIカウンター「かうんとと」計測の様子。計測対象のカンパチのみを計測し、途中のカワハギは計測しません
※動画再生時には音声が流れますので、音量にご注意ください。
▲計測結果はタブレットで確認
※動画再生時には音声が流れますので、音量にご注意ください。
確かに激しく動く尾の形のパターンを正確に全部学習させるとなると気が遠くなる程のパターンがありそう…。だったら除いてしまおう、とは逆転の発想ですね!
冷凍食品のような加工食品とは違う、生き物ならではの難しさを感じました。
▲生け簀(いけす)内を泳ぐカンパチ
他にもたくさんの技術開発に取り組んでいるようですが、どのようなものがありますか?
魚の体長を画像解析技術によって計測する技術(特許取得済)、魚群行動を解析する技術(特許出願済)などがあります。開発中のものもまだたくさんありますよ。
新しい技術が完成したら、また教えてください。
自然を相手にする大変さや喜び
養殖場の作業は苦労も多いのでは?
そうですね。1日中船の上にいることもあり、特に悪天候の時は大変です。海が荒れてしまうと試験を延期することも。養殖場は九州を中心に鹿児島県などにあるのですが、作業中に桜島が噴火して灰がふってきたこともありました。ただ天気に恵まれた日は自然の中、海の上で仕事ができることをうれしく思います。
▲海の上で作業中
自然と向き合いながらの仕事ですね。
はい、自然や生き物を扱う難しさはあるものの、スマート化でもっとうまく付き合っていけるのでは、と思います。
嵐がきていても、遠隔地にいても、スマホやPCでいつでも魚の状態、養殖場の状態をチェックできるなど、色々な技術でもっと養殖を進化させていきます。
養殖技術が進化すると、私たちにとってどんないいことがあるのでしょうか?
より安定した数量・品質のお魚をお届けすることができるようになります。
つまり、スーパーの鮮魚コーナーや外食店でのお魚ラインアップの充実化につながるかもですね!お魚好きとしては大変楽しみです。
また、養殖の作業負担が軽減されることで担い手が増え、養殖業の発展にも貢献できると思います。
すばらしい!
Oishiine!!会員のみなさんへのメッセージ
最後に、お魚大好き!Oishiine!!会員のみなさんへメッセージをお願いします!
AIのような最新のテクノロジーを駆使して魚にも労働者にもストレスがかからないような生産方法を模索し、おいしい魚を将来に渡って安定的に供給できるような技術開発を進めていきたいと思います。
いかがでしたか?本日はこれからもずっとお魚をみなさまへお届けするため、養殖技術の開発に日々奮闘する中央研究所 技術開発課ICTチームのお仕事を紹介しました。
ご覧になった感想や次回のお仕事紹介のリクエストなど、コメント欄への投稿お待ちしています。
また「知ってなるほど!クイズ」では、魚の養殖技術に関するクイズを出題中!ぜひ挑戦してみてくださいね♪