取材監修/九州女子大学家政学部栄養学科教授 河野光登 先生
最近、スーパーなどで見る機会がふえてきた「トクホ」のマーク。「なんとなく健康によいのかな」というイメージがありますが、「トクホ」のマークの付いた食品は、実際に食品の機能が科学的に証明されたもの。健康的な食生活を送りたい人にとって、「トクホ」マークは食品選びの指針になるものなのです。そして10月9日は、「トクホの日」推進委員会が制定したトクホの日でもあります。
機能性表示ができる食品とできない食品
トクホは「特定保健用食品」を略した言葉です。安全性や有効性について国が定めた基準に従って、食品の機能が表示されている食品を「保健機能食品」といいますが、トクホはその1つです。
食品をトクホとして販売するには、消費者庁に申請しなければなりません。まず、販売しようとする食品の形態で表示したい機能を科学的にきちんと調べ、その根拠を示す必要があります。そのうえで、国の審査を受け、許可されることで、トクホとして販売することができるようになります。
あくまでも食品であって医薬品ではありませんが、表示された機能があることが、科学的にきちんと確認され、国の許可を得ているというのがポイントです。健康によいとされる数多くの食品が世の中にあふれている今、信頼できる食品を選ぶ目安となるのがトクホマークなのです。
トクホは、健康の維持・増進に役立つことが科学的に確認された食品ですが、食品の機能として具体的にどのようなことが表示されているのでしょうか。表示の例と、その機能をもたらしている成分の例をあげてみましょう。
●おなかの調子をととのえます/お通じの気になる方に適しています 腸内環境をととのえる:ビフィズス菌、オリゴ糖など
●血圧が高めの方に適しています 牛乳由来の成分:ラクトトリペプチドなど
●歯を丈夫で健康にします むし歯になりにくい糖分:パラチノース、マルチトースなど
●カルシウムの吸収にすぐれ、丈夫な骨をつくるのに適した食品です 大豆に含まれるポリフェノールの一種:大豆イソフラボンなど
基本的にトクホも含め、保健機能食品に疾病(病気)についての表示はできないため、通常のトクホで表示できるのは、「〇〇の気になる方に」といった表現になります。ただし、トクホには「疾病リスク低減表示」というカテゴリーがあり、特定の病気のリスク低減に役立つことを表示することが認められています。最近「疾病リスク低減表示」が認められたトクホを紹介します。
●将来、心血管疾患になるリスクを低減する可能性があります 青魚に多い:DHA、EPA(DHA、EPAが特定の病気のリスク低減に役立つことを表示できる「疾病リスク低減表示トクホ」)
日ごろから気になっている不調や、健康診断で注意が必要といわれていることがあれば、それに合うトクホを選んで、健康の維持・増進に役立てるとよいでしょう。
心血管疾患に対する疾病リスク低減の特定保健用食品
冠動脈疾患を引き起こす原因となる血液中の中性脂肪値を下げる効果が期待できる特定保健用食品
トクホには、一般食品にも表示が義務づけられている賞味(消費)期限や保存方法などのほかに、トクホならではの記載があります。なかでも次の項目は、しっかり確認しましょう。
トクホに表示されている内容
トクホについて、「食べすぎ・飲みすぎてもトクホの食品を食べているから大丈夫」「病気を治療できるのではないか」などと考える人もいますが、それらは誤解です。
トクホはあくまでも、健康の維持・増進を図るための補助食品です。そのため、トクホには「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」という文言を必ず表示しなければいけないことになっています。この表示どおりにバランスのよい食生活を送りながら、補助食品としてトクホをとるのが正しい活用法です。
たとえば健康診断で「まだ病気ではないけれど、注意が必要」「数値がちょっと高め」などの場合は、生活改善を心がけることが大切です。そのサポート役となるのがトクホです。正しく理解して、上手にトクホを活用しましょう。