取材監修/帝京大学臨床研究センター顧問 同医学部臨床研究医学講座特任教授 寺本内科・歯科クリニック内科院長 寺本民生 先生
家族と楽しく過ごしたり、趣味を充実させたり、仕事に打ちこんだりなど、こうした生活の基盤となるのが健康です。からだを健康に保つためには、病気の予防や早期発見がとても大切。そのために欠かせないのが健康診断(健診)です。健診の案内やお知らせを受けとっても、「とくにからだに異常はないから」「まだ若いから」「受けるのが面倒だから」と受けていない人はいませんか。
健診は、からだになにも症状や異変がないときに受けるものです。多くの病気、とくに生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症など)は、早期には自覚症状がほとんどありません。そのため、「症状が出てから治療を受ければよい」と思っていると、見つかったときには進行しているケースもあります。症状がない健康なときこそ、健診を受けて病気の早期発見や予防、治療につなげることが大切なのです。
病気が進行してから治療をすると、完治まで時間がかかったり、医療費も多くかかることになります。健診を受けることは、自分の健康を守り、費用や時間を節約する“コスパ”、“タイパ”のよい方法でもあるのです。健診のお知らせが来たらぜひ受けましょう。
なお、なんらかの症状があったり、体調に異変を感じたときは、健診を待たずに医療機関を受診しましょう。
健診には、以下のような種類があります。
細かい違いはありますが、身長や体重測定のほか、血液検査、尿検査、胸部検査などが行われます。
このほか、健康状態を全般的に調べる「健診」に対し、特定の病気を早期発見するために調べる場合は「検診」といいます。検診の効果を国が認めた胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの検診は、受診費用の一部または全額が公費でまかなわれて、市区町村で安価に受けられます。お知らせが来たら、ぜひがん検診も受けましょう。
健診は受けるだけでなく、受けたあとが重要です。数値が悪くて「再検査」となったときは、必ず受診しましょう。「経過観察」であったり、「基準内」でも数値が年々悪化傾向にある場合は、生活習慣を見直すことが大切です。また前年の数値と比較して、基準内でも少しずつ悪化している項目はありませんか?小さな変化に気づくことが、生活習慣を見直す大切なサインになります。健診を受けっぱなしにはせず、次のアクションにつなげていきましょう。
実際、メタボ健診では、腹囲に加えて血中脂質や血圧、血糖などが一定の基準(保健指導判定値)を超えた人を対象に、医師、保健師、管理栄養士などの専門家が生活習慣についてアドバイスを行う「特定保健指導」が実施されています。自分だけでは生活習慣を変えていくのは難しいですが、専門家のサポートを受けることで、無理なく数値の改善につなげていくことができます。
●食事ではここに注意 基本的に、バランスのよい食事を3食規則正しくとることが大切です。それとともに健診結果で問題があった項目に応じて、以下のような食生活のポイントを心がけましょう。
●からだを積極的に動かそう 適度な運動は内臓脂肪型肥満を含む肥満の対策として効果的。中性脂肪を減らす効果や、動脈硬化のリスクを下げるHDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす効果もあります。
張り切りすぎてもつづかないので、気負わずにマイペースで継続できる運動を見つけましょう。スポーツ以外にも、近場なら歩いて移動する、エレベーターではなく階段を利用するなど、日常のなかで積極的にからだを動かすことも運動になります。無理なくできることから生活に取り入れて、楽しみながら健康な日々をすごしましょう。
※持病などで現在、医療機関を受診している人は、運動をして問題ないか医師にご相談ください。