取材監修/イシハラクリニック副院長 石原新菜先生
気温が低くなるとともに空気が乾燥する冬。寒くなると、からだは中心部にある重要な臓器を守るために、血管を収縮させて手足への血流を減らすなどして、からだの熱が逃げるのを防ごうとします。血液は酸素や栄養素とともに熱も運んでいるので、血流が悪くなった部位は冷えやすくなり、「冷え性」という状態を招きます。また、からだの筋肉は体熱を生み出す器官として働いています。そのため、男性に比べて筋肉の少ない女性や、痩せ型の人は、とくに冷えを感じやすくなります。
冷え性は、からだの冷える部位によって「下半身冷え性タイプ」「末端冷え性タイプ」「内臓冷え性タイプ」「全身冷え性タイプ」の大きく4つに分かれます。

「冷えは万病のもと」といわれますが、冷え性になると、肩こり、腰痛、手足のしびれ、便秘、下痢、むくみ、手湿疹、肌荒れ、女性では月経痛や月経不順など、さまざまな不調を招きやすくなります。温度差によって自律神経のバランスが乱れることで、不眠や食欲不振、頭痛、倦怠感などがおこることもあります。
また、からだが冷えていると、生命維持に消費される最低限のエネルギーである「基礎代謝」が下がり、同じような食事をとっていても太りやすくなります。冬に太る人が多いのは、寒くて活動量が減ることに加え、基礎代謝の低下も影響しています。
毎日のくらしで、できるところから効果的な「温活」を取り入れ、寒い冬こそ冷え知らずの健康なからだをつくりましょう。
冷え性を解消する温活には、食事、運動、入浴などさまざまなものがあります。まずは1週間、下記のような温活にチャレンジしてみましょう。そして、自分にあった無理のない温活を複数組み合わせ、毎日つづけていくことが、冷え性の改善につながります。
3つの首とは、首、手首、足首のこと。これらの部分は体表近くに動脈が通っているため、しっかり温めることで効率よく温活できます。ネックウォーマーやマフラー、レッグウォーマー、手首まで温まる手袋、リストウォーマーなどを活用しましょう。
おなかを温めると内臓が温まり、中心部で温められた血液が全身を巡ることによって冷えが改善されます。そのためにおすすめなのが「腹巻き」です。最近は薄手で機能的な腹巻きも多いので、自分の生活スタイルにあった腹巻きを探してみるのもよいでしょう。
からだの内側から熱をつくるには、筋肉を動かして鍛えるのがポイント。とくに、全身の筋肉の70%を占める下半身の筋肉を動かすと、効率よく熱が産生されて冷えを改善できます。ウォーキングなどの有酸素運動とスクワットなどの筋トレを併せて行うと、より効果的。
肉や魚、卵、大豆製品などに多く含まれるたんぱく質は、消化・吸収時に熱を発生させるとともに筋肉をふやす材料にもなるので、積極的にとることが大切です。
一方で、冷たい飲みもの、冷たいデザートなどがからだを冷やすことはいうまでもありません。冷えを感じる季節は、これらのものを控えめにすることも大切です。
入浴は、なるべくシャワーだけですませず、湯船につかるようにしましょう。からだが温まると同時に、下半身が水圧によって圧迫され、血液が効率よく心臓に戻って血流を促すことができます。肩までつかる全身浴もいいのですが、時間があるときは38~41度のお湯にみぞおちから下を15~30分ほどつける半身浴をするとより効果的です。
大根などの根菜、チーズなどの発酵食品、かぼちゃ、しょうが、にんにくなどは、東洋医学でからだを温める働きがあるとされる発熱食材です。積極的に取り入れましょう。温かいスープや鍋料理にこれらを入れるとさらに効果的です。
発熱食材のなかでも「しょうが」は、漢方薬の7割以上に使われる生薬であり、からだを温める作用にすぐれているので、料理にもおおいに使いたい食材です。紅茶にしょうがを加える「しょうが紅茶」は手軽に温活できるおすすめドリンクです。
生のしょうがに含まれるジンゲロールというからだを温める成分は、加熱するとショウガオールに変わり、温め効果がさらにアップします。
