取材監修/自治医科大学循環器内科学部門教授/同附属病院循環器センター・センター長 苅尾七臣 先生
健康診断でよく聞く「血圧」。でも、実は何を測っているのか知らない人も少なくありません。血圧とは、心臓から送り出された血液が血管壁を押す力のことです。イメージは、水道ホースに水を流したときの水圧。ただし、水道からは常に一定の水量が出ますが、心臓は血液を送り出す「ポンプ」として働いているので、心臓が縮んだり、膨らんだりするたびに血圧が上下します。
心臓が縮んで(収縮して)血液を送り出したときの数値
→「上の血圧(収縮期血圧)」
(最高血圧と呼ばれることもあります)
心臓が膨らんで(拡張して)血液を吸い込んだときの数値
→「下の血圧(拡張期血圧)」
(最低血圧と呼ばれることもあります)
血圧は、血管にかかる負担を知り、生活習慣病の予防に役立てるための大切な目安となるものです。

通常、1分間に心臓が拡張と収縮をくり返す鼓動の数は安静時で60~100回とされます。仮に70回とすると、心臓は1日で約10万回も収縮して血液を送り出すことになります。
血圧が高いと、収縮のたびに血管壁に強い圧力がかかり、徐々に傷ついていきます。傷ついた血管には、コレステロールなどが入り込みやすくなって、血管のなかが狭くなったり、血管が硬くなったりします。これが「動脈硬化」です。動脈硬化が進行すると、血管が詰まったり、破れたりします。心臓の血管でおこると「心筋梗塞」、脳の血管でおこると「脳卒中」など、命の危険がある重大な病気を招きます。高血圧は、血管の老化を早める原因になるのです。

血圧が高くなっても、痛みなどの自覚症状はありません。放っておくと動脈硬化が進行してしまいます。そこで、「これ以上血圧が高くなると危険なので治療が必要」という指標として、診断基準が定められています。
血圧はストレスなども大きく影響するため、大きく2つに分けて判断します(下記表参照)。医療機関で測る「診察室血圧」と、家で測る「家庭血圧」です。
家庭血圧は、自宅などで家庭用血圧計を用いて測ったときの血圧で、135/85mmHg以上が高血圧の基準です。近年では、朝に測る家庭血圧が、高血圧への早期対策に有効なことから重要視されています。そこで、日本高血圧学会では、「朝の血圧130mmHg以上は危険」というメッセージを広める「血圧朝活キャンペーン」を行っています。毎朝の血圧測定を習慣にしましょう。

高血圧対策の基本は生活改善です。重症の高血圧では薬が必要になりますが、その場合も生活改善と治療を同時に行っていきます。食生活では以下のポイントに気をつけて血圧を上手に管理しましょう。
●食塩を控える血圧対策の基本となるのが減塩です。食塩をとり過ぎると血圧が上昇しやすくなるためです。日本人の食事摂取基準(2025年)では、1日の塩分摂取の目安量を成人男性で7.5g、女性で6.5g未満とし、高血圧の重症化予防のためには男女とも6g未満としています。
毎日のちょっとした心がけで食塩の摂取量を減らすことができるテクニックを紹介します。小さな積み重ねが大きな減塩につながるので、無理なくできることからとり入れてみましょう。
●カリウムを多く含む野菜や果物をとるからだに必要な必須ミネラルの一つであるカリウムには、体内の過剰なナトリウム(食塩)を尿や汗として排出する作用や、血管を拡張する作用があるため、血圧を下げる効果が期待できます。毎日の食事のなかでカリウムを多く含む食品を積極的にとりましょう。
※腎機能障害など持病のある人は、かかりつけ医に相談してください。
このほか、「禁煙する」「肥満を解消する」「アルコールを控える」ことなども血圧コントロールに大切です。できることから実践して高血圧の予防・改善に役立てましょう。
