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2025/08/01

夏バテを防ぐからだのつくり方

取材監修/東京疲労・睡眠クリニック院長 梶本修身 先生

暑くなるとなぜ夏バテがおこるの?

「からだがだるい」「食欲がない」「疲れがとれない」「夜、眠れない」−−夏になるとこうした症状に悩まされる人はいませんか?これらはいわゆる“夏バテ”という状態です。

夏になるとなぜ夏バテがおこるのでしょうか。一般的に夏バテは、暑さでからだが疲れる現象ととらえられていますが、じつはその正体は「自律神経の疲れ」です。夏バテは、夏に発症しやすい熱中症とは異なるメカニズムでおこります。

自律神経は、脳に栄養と酸素を供給し、脳の温度を安定させることを目的に、体内のあらゆる器官に指示を出す司令塔。各器官が機能するよう休むことなく指令を出して制御しており、生命活動を営むために欠かせない神経です。とくに夏は、自律神経に負担をかける要因が重なるため、夏バテがおきやすくなります。

その要因としてあげられるのが、日本の夏特有の環境です。暑さやエアコンによる寒暖差で脳温度の安定が困難なため、呼吸を増やしたり、発汗させて脳温度の低下を指示する自律神経に大きな負担がかかるのです。

夏の気候で自律神経のバランスが乱れると、食欲不振や睡眠の質の低下などがおこります。食欲が低下すると、そうめんやもりそばなど冷たいめん類だけですませてしまいがちですが、そうした食生活がつづくと栄養バランスがくずれて、免疫力の低下や体調悪化を招きます。その結果、ますます食欲が低下して、さらに栄養バランスがくずれる……という負のスパイラルにおちいってしまいます。

こうした負のスパイラルを断ち切るには、「自律神経を安定させる環境づくり」や「疲労回復に効果のある食品をしっかりとる」ことなどが大切です。

自律神経を整えるためのポイント

●エアコンを上手に使おう 暑さで寝つきが悪くなったり、熟睡感が得られなくなったりすると、自律神経が乱れやすくなります。エアコンは外気温との差が開きすぎないよう25~26℃を目安に自分の快適な温度に設定しましょう。冷えすぎも自律神経を疲れさせるので、同じ温度でも湿度を下げれば快適になり、自律神経が安定します。

●疲れた日はぬるめのシャワーで 夏の疲れた日に熱い風呂につかると、かえって自律神経に負担がかかって疲れを増やすことにもなります。疲れた日はぬるめのシャワーでサッとすませるのがおすすめ。湯舟につかりたい場合は、ぬるめの半身浴にすると自律神経が整いやすく、安眠を促す効果もあります。

●紫外線対策をしよう UVカット機能のある服、日傘や帽子、日焼け止めなどでしっかり紫外線対策を。UVカットグラスで目も紫外線から守りましょう。

●生活リズムを整えよう 夜ふかし、朝寝坊、食事を抜くなど、不規則な生活は体内時計を乱して自律神経を疲れさせます。夏こそリズムの整った生活を送りましょう。

疲労回復につながるイミダペプチドやクエン酸を含む食品をとろう

夏バテを防ぐ食生活の基本となるのが、栄養バランスのとれた食事を3食規則正しく食べること。食べやすいからと冷たい食事ばかり食べたり、スタミナをつけようと肉ばかり食べると栄養バランスがくずれて、体調を乱す原因になります。栄養バランスのとれた食事に加えて、下記を意識して食べると疲労回復につながります。

●かつおなどに含まれるイミダペプチドを積極的にとる 最近、イミダペプチドという成分の「抗疲労効果」が注目されています。イミダペプチドは、動物の「持久力の高い筋肉(羽ばたく筋肉、泳ぎ続ける筋肉など)」に多く含まれるたんぱく質の一種です。そのため、鶏のむね肉やまぐろ、かつおといった回遊魚などに多く含まれています。

イミダペプチドは、脳にある自律神経の中枢に届き、疲労を回復させることが確認されています。梶本修身先生がリーダーを務めた産官学連携の「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」による実験では、1日200mgのイミダペプチドを2週間とったところ、76%の人の疲労が軽減したという結果となりました。イミダペプチド200mgの目安は、鶏のむね肉なら100g、かつおなら150gで摂取できます。

※イミダペプチドとは、イミダゾール基を含むアミノ酸のヒスチジンが結合したジペプチドの総称です。イミダゾールジペプチドとも呼ばれます。イミダペプチドは、体内で吸収されるとアミノ酸に分解されて血液中を浮遊し、体内で必要とされる場所で再合成され、抗酸化作用を発揮します。

●レモンや酢などクエン酸を含む食品 レモン、梅干し、酢など、すっぱいものに多く含まれるクエン酸も疲労回復に効果的。クエン酸は、エネルギー源である糖がスムーズに使われるようにして、エネルギー効率を高めるからです。とくに、イミダペプチドとクエン酸を一緒にとると、相乗効果で疲労の回復力が高まることがわかっています。

●青魚に多いDHAやEPA さば、いわし、あじ、さんまなどの青魚に含まれるDHAやEPAは、体内の炎症をしずめる効果や免疫力の維持に役立つほか、酸素を運ぶ赤血球を柔軟にして全身のすみずみまで酸素を行き渡らせます。その結果、細胞がエネルギーを作り出すのを助け、疲労回復に大きな効果を発揮します。魚そのものを食べるほか、魚の缶詰などを利用すると手軽にDHAやEPAが摂取できます。

監修 梶本修身 先生
東京疲労・睡眠クリニック院長。医師・医学博士。
産学官連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」(2003年~)統括責任者。
大阪市立大学大学院 医学研究科 生体情報解析学 教授、大阪市立大学大学院 医学研究科 疲労医学講座 特任教授などを歴任。TVやラジオにも多数出演。
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